モフモフCG映画『ジャングル・ブック』
『アイアンマン』(と『アイアンマン2』)のジョン・ファヴロー監督作ということで見に行った。
多分、近年では一番好評の『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』は未見。3Dでもなく、もちろんIMAXでもない、ごく普通の2D字幕版。3Dで見たかったなーと思った。
アニメの『ジャングル・ブック』は幼児期に見たことがあるはず。だけど、それ以降見ていないのでほぼ記憶にない。アニメを元にした絵本も見ていたような気がするのだがなあ……。
ディズニーアニメで伝統的な動物の擬人化という手法は、いわゆるCGアニメで進化・発展が著しい。毛並みの表現、動きや表情の動物らしさと人間ぽさのバランスなどが、(観客の目からは“進化・発展”というよりは)「こういう表現の仕方があったか」という“新鮮なアイデア”として提供されるので、見ていて楽しい。映像表現の進化が楽しみとして味わえるわけで、このジャンルにとっていい時代なのだと思う。
例えば、『ボルト』の鳩。タマフル映画評の中でも「鳩の鳩っぽさがすごい」と言われていて、どういうものなんかなと結構後になってBDで見てみたら、確かにその通りで笑った。
これもまたタマフル映画評で言われていた、『カールじいさんの空飛ぶ家』に出てくる犬もそうだろう。
この犬っぽさって、漫画『動物のお医者さん』の犬ぞりレースをする犬たちの様子に似ていると思う(静止画を動画に脳内変換した結果)。
だが、今回は「実写映画」だ。カッコ付きにしたくなるのはもちろん、主役の子役はほぼブルーバック前で演技をし、CGの動物と合成するという作り方の映画だからだ。動物は超リアル。だけどCGなわけで、その点「CGアニメ」との違いはなんなんだ? ということを意識せざるを得ない映画ではある。
まあでも、最近のハリウッド大作はCGの比率が高いので、それはいつもうっすらとは感じていることでもある。
で、今作のバランスは、「動作は完全に動物(少なくとも前半は)、言葉だけ人間語」というものだった。
例えば、オオカミたちが悪役のベンガルトラ、シア・カーンに怯えるというシーンは、完全にオオカミの(というか犬の)怯え方。やや目を伏せて左右に泳がせ、その場で横に足踏みするというような、見たことあるやつだ。
身のこなしも、シア・カーンや、モーグリの後見人的なクロヒョウ、バギーラの、巨体ながらしなやかで跳躍力のある感じなど、実にネコ科の動物らしい。そういう点では「擬人化」ではなく、動物の動きを高度に再現し、かつ演技をさせたものというべきだ。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のCGトラのノウハウを使ったりしたのかなーと思った。
子オオカミたちは猛烈に可愛いし、バギーラも人格的にはしっかりしているけど出来ることには限界がある感じがいとおしく、とにかくみんなめっちゃなでなでモフモフしてやりたくなると思った。
ただ、後半、クマのバルーが出てきて以降は、結構擬人化された動きをする動物の比率が高くなる。これは計算だろうし、うまくいっているから別に気にならない。サルたちはそんなに動物っぽさを重視してなかったような。
ストーリーはですね(以下ややネタバレ)モーグリのしたことはあれ、絶対許されへんのちゃうか? と思った。そんなにギリギリとツッコミたくなるような映画ではないけど、あれはやっぱりなあ……。
パンドラの箱を開けるとか、蛇にそそのかされてリンゴを食べちゃうとか、腐海の胞子を谷でばらまくとかレベルの取り返しの付かないタイプの過ちだと思うんだけどなー。シア・カーンのほうが幾分かジャングルの生き物としては真っ当なことを言うてる気がしてならなかった。
「動物に仮託して、寓話的に社会の構造や善悪を考える」という面では『ズートピア』に比べて圧倒的に練りが足りない脚本だと思った。練っちゃうと『ジャングル・ブック』じゃなくなると判断したんだろうと思うけど、しかしあれはやっぱりなあ……。