書き逃げ

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『ターミネーター2 3D』現代アクション映画の金字塔(の3D版)

言いすぎではないと思う。

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t2-3d.jp

 

一作目に続き、またも遠路はるばる立川まで赴き、見てきた。3Dかどうかは抜きにしても、とにかく画面がきれいで、というか「かつて見た、記憶の中のままの美しさの」『T2』が見られてよかった。3D自体も、「なんとか効果を出そうとしやがって」みたいなやたらに飛び出して目が疲れるような不快感はないちょうどいい仕上がりである。

でも、厳密に言うと「記憶の中のままの美しさ」ではないところがあることに気づかされて、「そりゃそうか」とも思った。

俺の記憶の中ではこの映画は、潤沢な予算で、思いついたアクション、変形、爆発、すべてを当時最高のクオリティで撮ったというだけではなく、超ウルトラハイパークリアな映像である、ということになっていたのだ。

でも、今回見てみたら、薄暗いシーンとかでは結構フィルムグレインがあった。また、冒頭の戦闘(戦場)シーンでは、合成された奥の方(巨大なT-100?や、ハンターキラーが飛んでいる)と、手前(人間が攻撃をよけて走ったりしている)の間で画質の違いが歴然としていて、「こんなに『古い映画』に見えるとは!」と驚いてしまった。しかしこれは、ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ 特別篇』的なオリジナルへの冒涜をしていないということであり、好ましい。いいレストアだ。

内容はもう、ご存知と思うので詳しく書かないけれど、最高にいい満腹感を味わわせてくれる映画である。見せ場もかなり、この当時としては驚異的に、多い。始まって間もないのに惜しげもなく水路でカー(バイク)チェイス! ここの「実際にバイク2台、トレーラー1台同時に走らせてますよ」と錯覚&納得させる撮り方は最高にうまい。もちろん、本当に同時に走ってる時もあるのだろうが、ずっと映画通りなわけはないしね。

あと、当時見て「ああ、これはとてつもない映画だな」と思わされた(ことを思い出した)シーンが、サラ・コナーが夢で見る核爆発シーンだ。これ、ちょっとした悪夢のシーンに過ぎないのに、ちゃんとミニチュアセットを組み、燃えながら藻掻いて叫ぶ体のアニマトロニクスを作り、焦げた肉が吹き飛ぶ後に残る骨を仕込んでいる。こんなシーン、昭和ゴジラだったら最高の見せ場である。それを「まあ、やる以上はちゃんとやりますか」という感じで、やっている。こりゃあもう、日本の特撮映画は勝てっこないなと痛感したものだ。

こんな、もりもり盛り上げる見せ場の連続に食傷してしまわないのは、登場人物たちの行動の理由、理屈がきちんとわかるからだ。なぜこうするのか、こうしないといけないのか、こうできないのか、こうしてしまうのか、全部明確である。聞いてるか、マイケル・ベイ

 

『T2』は一作目とは違い、ホラーではなくなっているわけだが、一番怖いシーンはサラ・コナーがマイルズ・ダイソン邸を襲うシーンだ。ここは一作目に似た感触がある。そこで恐怖の対象になっているのが、前作は襲われる側だったサラというところに面白味を感じる。やっぱり映画では、恐怖に触れちゃうと、その側に取り込まれるんだね。

 

そもそもジャンルが違うということもあるけれど、一作目の『ターミネーター』は少なくとも「現代の映画」には見えないと思う。まずルックがあまりにフィルムっぽいので無理もない。しかし、もう30年近く経っても『T2』はまだ「現代の映画」っぽい。それは、ハイパークリアな映像であることはもちろん、これ以降の映画がこの映画を参照して作られていったからだろう。見せ場の質ではなく、量だけは倣ったような映画がいかに多いことか。

近年の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』にも、参考にしたと思われるシーンがあったしね。なによりも、「登場人物がもたもたしてない」「登場人物に(サスペンスを作るための)バカがいない」という素晴らしい美点も、この映画から受け継いだものではないかと思った。