書き逃げ

映画、音楽、落語など

チャーハン成功譚・檀一雄風

写真を撮るマメさがない自分が悔しい……。

先日来の自炊、料理生活の一つの山場として、チャーハン作りに成功しました。野菜を炒める、麻婆系のものを炒め煮するというのとは違い、失敗すると大惨事になりそうなチャーハンには怖じ気づいておりました。しかし実際やってみると、ポイントさえ押さえればすんなり出来たので、嬉しくなって中華お玉まで買いましたよ。

ということで、画像はないので、大雑把料理文学界の先達である檀一雄先生にならって、読めば大体美味しいチャーハンを作れる文章を残しておこうと思う次第。

 

 

ある程度、中華鍋の使い方に習熟してくると——習熟してなくてもその味の良さのために——チャーハンを作りたくなる人は多いだろう。ぱらりとした飯に油が絡み、少し焦げた葱の香りがしたものをわしわしと、むしろざららざらと流し込むぐらいの勢いで食べるときの満足感は、格別なものだ。具材なんかは特別なものは邪魔で、ハムかチャーシューの切れっ端でもいくらか入っていればいいので、ようはパラパラした飯の食感と油との相性を食っているようなものなのだ。

特殊な、手に入りにくい道具や材料は不要だ。ただ、私が中華鍋を使っているから、これから以降は中華鍋を元にした作り方をご説明する。お玉も、現在は中華用のものを使っているが、私が最初に作ってうまくいったときは間に合わせの穴あきお玉だったのだから、必ずしも必須ではない。

 

まず具材を切り、すべてガスコンロの横に揃えて置いてもらおう。白ネギを10センチばかり粗みじんに切っておく。ハムなりチャーシューなりをこれも5ミリから1センチ角ぐらいに細かく切っておこう。ニンニクも一かけ、粗みじんにしておく。

肝心な飯は、必ず堅めに炊いておくこと。柔らかい場合は見送った方がよい。量は、多くても茶碗に一杯半までだ。それ以上多いと、いくら貴君の中華鍋が大きくとも、素人の手には負えかねると思う。

実は理想的なのはパックご飯である。これを電子レンジで温めたものは、もちろんメーカーによる違いはあるだろうが、ちゃんとパラパラにほぐれてくれるのである。

他に用意すべきは、卵を2個あらかじめ割って解きほぐしておくこと。塩とこしょう、醤油もコンロの脇に置いておいた方がいいのはもちろんだ。

さて、中華鍋をガスコンロで温める。これは中途半端な温め方ではお話にならない。中火で構わないが、家庭用の火力であれば、2分から3分は確実に温め続けなければならない。鍋から煙が上がり、それも終わって鍋の色が青白く変色してくるぐらい、辛抱したまえ。

温め終わったらまず油返しだ。お玉二杯分ぐらいのサラダ油を鍋に入れ、全面に回して馴染ませる。油は捨てるなりオイルポットに入れるなりして、いったん火を消し、そこに新しい油を多めに入れる。大さじで2杯ぐらいが適当か。

そこにニンニクの粗みじんを入れ、小さい火で温める。すでに鍋は熱を持っているので、小さい火でもすぐにニンニクの小片は揚がり始めるだろう。香りが立ち、ごく細かいものが茶色になり始めたら、すぐに次の工程だ。ニンニクが焦げてしまうと苦みが出る。

火はそのままで卵を投入する。すかさず飯も追いかけて入れる。「卵が半熟になったら」というノウハウもあるが、そんな余裕は素人にはない。たいていもたもたしている間に半熟になっているものだ。早くするにしくはない。

すぐにお玉の丸いほうで飯を押し広げる。かつまた、飯の固まっているところを切るようにしてほぐし、お玉でか、あるいは鍋を振って飯を裏返すなどする。飯を鍋肌に押しつけて焼くのと、ほぐすのを交互にしていくわけだ。

これをある程度繰り返していくと、飯粒に卵がまとわりつき、段々とそれぞれが分離、独立していく。そうなってきたところだ、火を強火にしたまえ。

そこでハムかチャーシューかを中に加える。塩を二つまみほど、こしょうをたっぷりふる。そこからさらにいためて飯の水分を飛ばし、表面をぱりっとさせるわけである。

飯がさらりと鍋肌を滑るようになったら葱を入れ、少しく炒めて葱の香りが立ったら、鍋肌から醤油を少し垂らし、ざっと混ぜて出来上がりだ。最後にごま油をたらし込んでもまた香りがよい。

 

「檀流クッキング」に似たかな……?

「ここが大事だな」と思ったのは、卵とご飯を入れ、ある程度ほぐれるまでは小さい火でよくて、ほぐれてから強火にするってところ。これは空焼き&油返しをしっかりしているから出来ることだと思いますけどね。

中華料理の強火幻想は根強いし、ネットでの調理動画でも基本、最初から最後まで強火だけど、ほぐすところまではじっくりやっても大丈夫でしたね。