書き逃げ

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『アベンジャーズ/エンドゲーム』多くの3歳児がいる新世界

この作品全体の批判ということではないですよ。そしてネタバレありますよ。

 

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2回見ました。面白かったし、色んなことがおこりまくって全然消化しきれないですからね。超最高! 史上最高の映画! とまでは思わないけど、十二分に面白かったし、満足した。R.I.P.トニー!

ルッソ兄弟の能力はちょっとすごすぎると思う。膨大な文脈(それも映画だけじゃなくてめちゃくちゃな量がある原作群含む)や登場人物の群れを捌いてしっかりしたストーリー、手応えを感じさせる一本にしてしまう力量は、娯楽映画の監督としてこれまで見たことがない。こういうことが出来た監督がこれまでいたのだろうか。いたとしても、こんなプロジェクト(10年がかりのある意味連作、それを22本目の映画で締めくくるというような)がないからわからないわけですが。

 

と大満足したわたくしなんだけど、映画を見て考えさせられたことがあるのでその話を。

大まかに言うと、この映画はサノスがフィンガースナップして5年経ち、アントマンことスコット・ラングが量子世界から戻って来たことをきっかけに、消された50%の人たちを戻すべくアベンジャーズたちがタイムトラベルを使った作戦を遂行する…というストーリーである。

えっ、5年も経っちゃったの!? というのはいい掴み、というか、観客に衝撃を与える悪くないやり方だと思った。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』がはじまるやいなや14年後になってるみたいなものですよね。

しかしわたくしは、5年後に失った人がまた戻ってくると、どういうことが起きるのだろうと思わざるを得なかった。

そんな話をするための映画ではないから、インパクト一発「えっ、5年も!?」で全然構わないんですが、我が身に引きつけて考えると、「5年も経つと、新しい生活始まってしまった人多いやろ……」という気がした。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で身につまされあう

映画『メッセージ』のネタバレ感想プラスアルファ

 

多分、配偶者を失った者同士が新たに夫婦となったりするだろう。“呆気なく”、そして多くの無辜の人々にとっては“意味もなく”、身近な人が消えるかも知れない世界では、長期的な人生設計よりも何よりも、近くにいる人との結びつきを強めたいと考える人が多くなるだろうと思う。

ひとまず絶望と落胆、それから前向きに生きるという選択をする過程にかかる時間を考えると(キャップも互助会に出てましたが)、5年後の世界では大体3歳の子どもが一番多いのではと俺は睨んでいる。

そこに、やっぱり無辜の人々にはよく分からない理由で、いきなり「いやー、ごぶさた!」と消えてた人々が帰ってくるわけである。結構多くの人が気まずい思いをし、かつ新しく生まれた人間関係との齟齬に苦しむだろうなと思うのだ。

「ただいま! 俺、帰って来たよ!」

「えっ、あなた……」

「喜んでくれないのか? 俺だ、俺だよ!」

「……あなたが生きて帰って来てくれたのは嬉しいけど、私もう再婚して、お腹に……」

「おまえ……マジか……」

みたいな、点々が多い会話があちこちで繰り広げられることになると思うのだ。5年経ち、やっと前向きに生きる決意が固まってきたところでこれはキツいやろ。

『エイジ・オブ・ウルトロン』でもアベンジャーズの存在(主にトニー社長の独善)が世界を壊滅の危機に導いたが、今回も連中は体裁としてはいいことだけど根本的な人間不信を生み、結果として世界を崩壊させるような行為をしてるな、と思いました(これは言い過ぎ)。